これまで、奄美で様々な撮影を行い映像を撮ってきたが、実は目の前に広がる奄美の美しい光彩感が映像に乗らないことに対して常々不満を抱いてきた。直射日光が厳しい奄美なのだから、その光量と影部分、更に彩度の両方を成立させることは非常に難しいのだ。そこで、アメリカや国内で製作・上映されているシネマカメラとして多くの作品に採用されているRED DIGITAL CINEMA HELIUM 8K S35ならば、奄美の風景をどのように表現してくれるのか、テスト撮影を試みた。
一眼レフカメラの性能が上がりHDRに対応しているということで、これまで何度かカメラテストを行ってきた。結果は、どのカメラもきれいな映像を描き出してくれるが、どうしてもその光量に見られる太陽や雲、水面の反射などのディテールについてはHIが飛んでしまうのだ。これを解消するためにLOG撮影してグレーディングで解決するための投資と実験を重ねたが、結論としてやはりRAWで撮影する必要があるという結論に至った。つまりRED-8Kで奄美を撮影しようという試みは、奄美の魅力を余すことなく記録するために、これまで様々な実験を積み重ねてきた終着点だと言えるのだ。
セッティングは、S35センサー搭載のREDにシネマレンズ(50~100mm)を装着し、必要に応じてマッドボックスにNDフィルターをプラスして被写界深度を構築。
カメラテストするにあたって、場所は奄美の北側に位置する“大浜海浜公園”とし、日が沈む夕刻にカメラを回すことにした。

ファーストカットは木々の間から夕日が沈む海がわずかに見える丘に女性がかけていくというシーンにした。このカットは実は非常にシビアで、ほぼ逆光状態。この条件なら当然女性はシルエットになるのだが、RED-8Kは光があふれる光彩感の中に佇む女性を見事に描ききっている。さらに、逆光の中に見える波の揺らぎが映し出しされたときは感動さえ覚えた。さらに、この厳しい条件のなかRED-8Kは解像度を保ち細部にわたるまで破綻なく映像を書き出してくれたのだ。
2カット目は、ローアングルでモデルが砂浜を横切るシーンとした。
このカットは海の色と山、そして空のディテールが溶け込んでしまい、全体的にぼやけた印象の映像になってしまった。


今回の編集ソフトはDavinci Resolve17を使用し、HDRでグレーディングを試みてみたのだが、直感的な操作で海の淡い色と山のグリーンそしてディテールにドラマティックな色彩を乗せることができた。さらに編集ではResolveFX“レンズフレア”を使用して、海の向こうから光が差し込むエフェクトを追加した。モデルの動きはスロー50%でカクツキはなく柔らかな画に仕上げることができた。
このように、今回のテストでは編集ソフトで様々なエフェクトを追加するなどして映像を汚してみたのだが、RED-8Kはもともとの解像度がしっかりしているためか、ResolveFXプロミストを使うなどしても印象がぼやけてしまうことはなかった。

最後に、夕日を撮影したラストカットだが、実はこのカットは夕日の風景としては当然に、もともとは赤と黄金色に染まった夕日カットだった。しかし、淡いブルーでトンマナしたかったので、夕日をブルーに回してモデルシーンとのつながりが違和感ないようにしたかった。


今回、RED-8Kでの撮影フォーマットは RED RAWフォーマットで拡張子はR3D、撮影した後からでも破綻なく色補正が可能とのことだったので、思い切って大胆に色を回してみた。それでいて夕日の色が破綻しないよう細心の注意を払う必要があると覚悟して調整したのだが、実は調整時間は5分程度、たった5分で、赤い夕陽風景がさわやかな夕刻の風景へと印象を変えてくれた。
同じくエンドロールのバック映像も、非常に自然で柔らかなトーンが表現できたと思う。

結論として、DSLRなどで撮影した映像ももちろん、それぞれのメーカーの個性があっていいのだが、RED-8Kなら撮影後に調整で費やしていた時間を大幅に節約することが可能になり、さらに大胆に補正したりエフェクトを乗せても破綻がないという結果を得られた。
今後、奄美の風景をデジタルシネマとして残していく私の相棒として、RED-8Kは大いに活躍してもらうことになると思う。
常田圭一(映像作家・サウンドデザイナー)
