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「風景を切取らない!?」全風景を撮る360°カメラ

「ちょっとした散歩道、何気ない情景、旅行に出かけシャッターを切る・・・」最近では、写真家や我々のような映像屋だけではなく、一般の人も気軽にカメラで写真を撮るようになった。

目の前に広がる風景や空間を“切取る”ことで、プロカメラマンたちは、美しさとテーマ性をおびた作品として、多くの写真を世に送り出してきた。しかし、スマートフォンやデジタルカメラの技術的躍進によって、優れた写真が、当たり前のようにインスタグラムにアップされるようになり、写真撮影はプロのみの領域ではなく、大衆の娯楽の一つになり、より身近なコミュニケーションツールになったと考えている。

スマートフォンで撮影

”プロ”を驚愕させるカメラ『360度カメラ』

Insta360
我々プロは、カメラの機械的なスペックがいくら向上しても、画角や構図で勝負しているし、こればかりは素人さんには絶対にマネできないと考えてきた。しかし、この360度カメラは、そもそも画角や構図という概念がないのだ、なぜなら、シャッターを切る瞬間のカメラの回りに起こっている風景すべてを記録するカメラだから(!?)、つまるところ「風景を切取らない」カメラなのだ。
“風景を切取らない”ということは、乱暴な言い方をすると、見たいところがすべてみえる失敗しないカメラということになる。空間風景を記録する写真や映像になるので、パーンやチルトする必要がない。(撮影後、パーン・チルトすることができるコンテンツになる)論より証拠、NHKもすでに360度コンテンツを作成しているので見てほしい。NHK VR

少し見るだけで、今までのカメラと違うことは理解できると思う。
今回は、なぜ私がこのカメラに可能性を感じているかについての概念を話してみたいと思う。

地方は田舎風景を魅力的な作品にする必要がある。

まず、私は“奄美”に住んでいる。奄美という離島(地方)に暮らして思うことは、都会と比べて圧倒的に被写体が限られているということである。
それに比べて都会は被写体が豊富、例えば東京タワーに代表されるランドマーク、さらに渋谷・新宿・原宿・池袋など有名な街並み。街は被写体群と考えることもできる。とにかく、身の回りに様々な被写体があふれ、うらやましい限りである。異論はあるとは思うが、ここで踏まえていてほしいのは、私がここで言う被写体とは“物質的被写体”のことだ。これら、物質的被写体を構図で切取ることができる都会とは対照的に、奄美は物質的被写体が少ないので田舎風景がメインになり、構図がパターン化しやすい。つまるところ、奄美の場合は圧倒的に“海”を配置した構図パターンが、どうしても多くなってしまうのだ。ここで考えるべきは、田舎風景をどのように魅力的に作品化できるかが大切になってくる。
tokyotower

地方優位性作品を成立することができるのか!?

私が暮らす島『奄美』で撮影されたコンテンツは、“海”の作品が多い。それもそのはず、人工的なものが少ない分、海や山などの自然風景が圧倒的に多いし、その海や山が感動的に美しい姿をみせてくれるのだ。さらに、自然に乏しい都会撮影作品との差別化をはかる意味も相まって、我々のような地方の作家やカメラマンは“身の回りにある自然、つまり“空間風景”を被写体にして作品にしている。
さて、ここで問題だが「地方の空間風景は物質的な被写体といえるだろうか?」答えはもちろん「ノー」である。地方もいろいろあるので当てはまらない場合もあると思うが、ここでいう一般的な地方においての空間風景、すなわち被写体は「非物質的」といえる。これは、明確な都会作品と差別化であり、だからこそ都会の人々にとっても魅力的な作品となりえるのだ。
しかし、カメラマンは撮影するにあたり、どうしても撮影目標(被写体)がほしくなる。空間風景作品といいながら、実は海に浮かぶヨット(物質的被写体)や岬の灯台(物質的被写体)を撮影してしまうのは、ある意味“写真・映像とは構図によって美しさを表現するアート”なのだから、仕方がないことなのだと思う。しかし、そもそも地方優位性を表現した空間風景作品とは、どのような作品なのだろうか?アートとして、コンテンツとして、表現として、魅力的な作品になりえるのだろうか?
非物質的=『目標物がない空間風景作品』を成立させるには、どうすればいいのだろうか。

物質撮影は2次元向き!?空間撮影は3次元向き!?

名瀬の街
地方における、海や自然やひなびた街並みは、そのほとんどが非物質的(撮影目標がない)だ、つまり、地方でよく見る“風景”のことだ。風景とは“主観者が見ている景観であり空間のことを指す。だが、空間をカメラやビデオで撮影しようとすると、どうしても16:9や3:4の画角で風景を切取る(構図を取る)必要があり、主観者が見ている360度全景から一部を切取ったものが作品となる。しかし“空間”とは、主観者が認知する3次元の領域や状態なのだから、その中から、画角という手法で、2次元に切取ってしまうと、どうしても空間としての定義は失われてしまい、物質的目標があり構図がある作品と比べるとめおとりしてしまうのだ。

現に私は、奄美で様々な撮影を行ってきたが満足できなかった。いつも「どうして目の前に広がる風景の美しさが表現できないのだろうか」と、自身の表現能力の未熟さと才能に絶望的な憤怒を抱いてきた。しかし、考えてみると『空間(3次元)を撮影したいなら、これまでの2次元表現では無理があるのだ、やはり、空間(3次元)を撮影したいのなら、3次元を撮影できるカメラを用いるべきなのである。ゆえに、地方で都会と差別化した作品を撮影するためには、そこにある風景景観季節アクティビティ地域住民の営みやその人情などを、空間まるごと撮影することが『地方優位性作品』になりえるのだ。

地方空間をまるごと撮影する

『空間をまるごと撮影する』というのはどういうことなのか、夕日の撮影を例に説明する。
“空を赤く染めながら水平線に沈む夕日”の映像を撮影するとしよう。しかし、地方でも都会でも同じ太陽、同じ夕日なのだから、実は湘南や江の島でも美しい映像が撮影できるのだ、つまり『地方優位性作品』にはなりえない。しかし、地方で空間撮影するとどうなるだろう。前方に見える夕日だけではなく、足元に広がる白い砂浜、目線を上げ横を見ると白い海岸が広がる、頭上は赤からピンク、紫のグラデーションに雲が染まり、そして後方は星が瞬き澄んだ空気であることがうかがえる、鳥たちは夜を迎える準備をし、木々はゆっくりと潮風に葉を揺らしている。そこには、都会の謙遜がないことが嘘偽りなく撮影されるのだ。
夕景

「空間撮影」とは、すなわち前方の風景だけでなく、そこにあるアート性の関係性と、空間に存在するものの相関関係を撮影できるということだ。そう考えると、4:3や16:9など、画角に納めてしまう作品はどうしてもその魅力が消えてしまうのだ、特に、地方に存在する美しい自然を撮影するならば、「空間撮影」は優れたアート性をはっきすると確信している。
宣伝文句的に言うと「憧れの国やリゾート地に旅行しているような映像作品」さえ撮影することができるのだ。

空間撮影するガジェットの存在が、地方をおもしろくする!

ダイビング撮影
さて、「空間撮影」は地方に向いていることが、なんとなく伝わっただろうか?特に、手つかずの自然が残っている地域などは空間撮影し、その魅力を表現したほうがいい!
観光コンテンツ利用にも優れていると思う。
観光利用と考えると、温泉地やスキー場、または旅館やホテルの案内などにも向いていると思う。また、我々のような南国ならば、やはり水中撮影だ!

まるで、本当にダイビングしているかのような映像を公開することができる!これらの優れたコンテンツによって、地方の魅力が表現され、YouTubeなどで紹介されれば、観光客も地方の魅力に気がつくと思うし、世界からのインバウンドの誘致にも一役買うことになると確信している。つまり、空間撮影できるカメラは、地方にとても向いているのだ!

さて、次回からはいよいよ、「空間撮影」するカメラについて、具体的に紹介したいと思うのだが、もしも、直接カメラに触ってみたいという方がいるのであれば、私は大歓迎である。このカメラは、工夫すれば様々な表現を可能にするので、様々な業界とイノベーションして、もっともっと地方を盛り上げていきたいと考えている。